おうちでHuluで観ました。
めちゃくちゃ簡単に言うと
「粗野な白人ドライバーと上品な黒人ピアニストが人種差別の激しいアメリカ南部をツアーで巡るお話」
です。
タイトルの「グリーンブック」は黒人旅行者のためのバイブルだそうです。
「白人以外お断り」の施設もあるので黒人が安全に利用できるホテルなどの施設をまとめてあるガイドブックが当時は必須だったようです。
時代は1960年台のアメリカ、人種差別が色濃く残った南部をあえて黒人の天才ピアニストのシャーリーがツアーをします。
トニーはイタリア人でドライバー兼用心棒のような感じでそのツアーの為に雇われるのです。
性格も人種も生活レベルもまるで違う2人の凸凹コンビのやりとりはシリアスな衝突ももちろんありますが楽しい場面も多くて私は観てよかったなと思いました。
〈以下ネタバレ有の感想〉
イタリア人トニーは黒人への嫌悪感が最初すっごく強い。
家に来た黒人の作業員にトニーの奥さんが飲み物を出すのですがその時使用したグラスを彼らが帰って奥さんが見てない時にゴミ箱に入れるくらい。
でも奥さんはゴミ箱で発見したグラスをもとに戻していたので奥さんの差別意識はあまりなさそうでここからもういい奥さんなんだなという感じがします。
ピアニストのシャーリーはカーネギー・ホールの上に住みホワイトハウスでも演奏しているすでに認められた天才ピアニスト。
このどう考えてもちぐはぐな二人が旅に出るので面白いこともたくさん起こります。
この映画を観た人で多くの人の印象に残るであろうシーンはやっぱりケンタッキーフライドチキン!
ケンタッキー州に入って「カーネルサンダースのおいしいチキン」の看板を見つけて本場のチキンを食べなきゃ!大はしゃぎのトニーはバケツ1杯に買い込みます。
うまい!と運転しながらパクパク手掴みで食べるトニー
車の中に揚げたチキンの美味しそうな匂いが漂ってることが想像できます。
そんな中シャーリーはすすめられてもフライドチキンを食べることを頑なに拒否。
「フォークとナイフが無い」とか「(膝にかけた)毛布に脂がつく」だとかお上品に断りまくるのです。
この映画を観るまでしらなかったのですがフライドチキンはもともとは黒人のソールフードだそうですがシャーリーはそんなもの食べたことない、食べられないみたいなスタンスだったのでシャーリーが自分が他の黒人と同じじゃないと思いたい、思ってる感じがよく表れています。
それでも押し付けられて拒否しようがなくなってしょうがなくそっとチキンを受取り貴婦人が初めて粗野な食べ物をおそるおそる食べるように上品にフライドチキンを食べるシャーリー。
でも美味しかったのね、2つ目(別の部位)をすすめられた時にはすんなり受取ります。
「骨はこうする」とトニーがぽーいと窓から投げ捨てたのを真似してぽーいと窓から骨を投げるシャーリー。
楽しそうな2人。
続けて飲み物をカップもぽーいと捨てたトニーですが「拾いなさい」とぴしゃりと言われて車を戻すところまでセットで楽しいシーンでした。
素敵なシーンはトニーが奥さんに旅立ち前にねだられてた手紙をちょいちょい出すのですがそれをシャーリーが添削してロマンチックな手紙が出されるようになったところです。
奥さんもうっとりした顔でそれを読むのです。
でも最後にシャーリーに初めて会った時に「素敵な手紙をありがとう」って言ってて「ああ奥さんは全部お見通しの上で二人の共作?の手紙を喜んでたんだな」と思うとほんとに素敵な手紙と奥さんだなとほっこりしました。
もちろんシリアスなシーンもちらほら。
シャーリーは常に姿勢ただしくスラッとした長身にビシッと決めたスーツやジャケットスタイルでおしゃれでかっこいいです。
でも彼は才能もお金があってもとても孤独だったんですね。
他の黒人とはあまりにも違う生活をしていて黒人社会には馴染めるわけもなくかといって白人社会に馴染めるわけもなく。
そしてゲイだったことも途中で判明します。
「YMCA」って西城秀樹のヤングマンでしか聞いたことなかったので何のこっちゃらわかってなかったのですが表向きは若者のクリスチャンが集まる場所(クラブやホテル?)実際はゲイの人が出会う場になっていたところだとか。
夜中に警察に呼ばれてYMCAに行ったトニーが見たシャーリーが白人男性と一緒に裸で手錠に繋がれてる衝撃的な姿。
しかも顔には殴られたような痕があっていつも完璧紳士なシャーリーの面影は見る影もありません。
ゲイも当時差別対象だったようで警察官にも「おばさん」などと揶揄されていました。
正直そういう描写は無いけどこれまでのトニーを見てると本来はゲイも嫌ってそうですが気にしている後で謝るシャーリーに「気にするな。オレはNYのクラブで働いてたから知ってる、この世は複雑だ」って言ってるあたりにシャーリーに対する思いやりや気遣いが感じられていいシーンでした。
その後も口論になった末
「金持ちは教養人と思われたくて私の演奏を聴く」「黒人でも白人でもなく人間でもない私は何なんだ?」
と胸の内にずっとあったであろう叫びをトニーにぶつけたりするしんどい場面もありつつ…
ツアーの最後、
シャーリーが案内されたのは楽屋とは言えない物置のような部屋、
運転手のトニーが案内されたのはこれからピアノを聞くであろう白人の人達が優雅に食事するレストラン、
そこにシャーリーが来たのですが「決まりだからいれられない」と黒人であることを理由にこの人出演者にもかかわらず入れてもらえなくて
「ここで食事ができないなら演奏を辞退する」
とシャーリーが言い放ちます。
「契約は絶対守る」を信条としていたシャーリーが変わったことがここでも表れます。
トニーも怒ってこんな所出ようぜとホテルの支配人に「黒人でも入れる店」と紹介されたオレンジ・バードという小さなステージもあるお店に行きます。
そこで演奏するよう店員さんにすすめられて(店員さんはすごいピアニストとは知らない)弾くシャーリー、それを見て他の楽器の演奏者も混じってセッションがはじまるとお客さんはノリノリ、シャーリーも立ち上がって弾いたり普段と違ってとても楽しそうに演奏します。
このシーン、個人的にはフライドチキンのことろと同じくらい好きです。
そして雪の帰り道、
警察官に車をとめられます。
以前は土砂降りの中同じようにとめられて「黒人は夜間外出を禁じられてる」などいちゃもんをつけられて雨の中2人とも車から下ろされ揉めたことがあるので「またか…」と渋々車を降ります。
しかし警察官は「タイヤがパンクしてるよ」と教えてくれた上タイヤ交換が安全にできるよう他の車を誘導したりしてくれたいい警察官だったのです。
今まで人の温かさを感じることがなかった旅に最後の最後に温かいことが続いてほっこりします。
そして家族と約束したクリスマスパーティーに間に合うように頑張るも体力の限界を迎えたトニーの代わりにシャーリーが運転をする不思議で素敵な光景。
クリスマスパーティーには途中参加ながらも無事間に合い、最後に勇気を出してシャーリーがそこに参加するという幸せな結末でした。